中国人民元の軟化で円高リスクが高まる
ドル円は、このところ超低金利のドルと円がともに不人気のため方向感がつかみづらい90円前後に値動きが収斂しています。日本の大手輸出企業が、今年下期の想定為替レートを85円-90円に引き下げていることもあり、今後も上値は輸出企業のドル売りオーダーで一段と重くなってくると予想される一方、日本の財政悪化懸念や国債増発懸念もあり、日本資産も買いづらい状況。このまま年末まで膠着が続くとの見方も強まっています。
そんな中、中国人民銀行が11日発表した貨幣政策報告のなかで、人民元為替相場メカニズムを改善する方針を示したことから、にわかに人民元政策の柔軟化観測が高まってきました。
人民元と円には明確な相関はありませんが、市場心理としては人民元上昇=円高要因と受け止めやすく、ドル円の持ち合い相場の下離れを誘発する可能性があり注意が必要です。下のグラフは人民元と円相場を比べたものです(出所:Quote.com)。黒が人民元(右目盛り)で、緑が円相場(左目盛り)です。
中国人民銀行が2005年に人民元の変動幅を拡大して以来、2008年7月まで3年間かけて、人民元は8.27台から6.81台までおよそ18%上昇しました。しかしその後サブプライムショックをきっかけとして金融危機が発生したことから、現在に至るまで人民元は6.82-6.83台でほぼ固定されており、人民元の柔軟化(実質的切り上げ)は中断された形となっています。
その間、中国人民銀行の貨幣政策報告では、人民元相場について「妥当で均衡の取れた水準で基本的な安定を維持する」との表現が使われてきましたが、今回の報告では、「イニシアティブ、コントロール可能性、および漸進主義の原則に従い、国際的な資本フローや主要通貨の変動を考慮して人民元相場の形成メカニズムを改善する」という文言に差し替えられています。金融危機がおおむね沈静化し、中国の成長にも再びエンジンがかかったことから、中断していた人民元政策の柔軟化を再開すると表明しているようにも受け取れます。
人民元レートを実質固定していれば、為替市場で余剰となったドルを中国人民銀行がすべて引き取る必要があります。当然の結果として、この間中国の外貨準備は加速度的に増加し、今や日本の2倍、2兆ドルに達する勢いです。中国としてもこのまま人民元相場への介入を続ければ、増え続けるドル資産で身動きが取れなくなり、外貨準備のコントロールがますます困難になることは間違いありません。
秩序だったドル下落・人民元上昇を容認し、外貨準備の激増やドル偏重に歯止めをかけるのが中国にとっても得策との意見も強まっていると思われます。先月中国人民銀行発行する金融時報が、「ドルは引き続き中国の外貨準備を構成する主要な通貨だが、ユーロや円の比率は上昇すべき」との論説を掲載し、市場の注目を集めたことも記憶に新しいところです。
さらに来週には米国のオバマ大統領が中国を訪問することから、中国としても人民元政策柔軟化を「手土産」として用意する可能性があります。またドル安に苦しむ欧州各国や日本でも、ドル安そのものの是正よりも、自国の競争力の相対的向上につながる人民元の切り上げを求める声が高まっています。人民元政策の柔軟化観測が年末にかけての相場の波乱要因になることを想定しておいて損はないでしょう。
週末で流動性が低下し、予期せぬ大幅な動きとなる可能性があります。ポジション管理・リスク管理にはくれぐれも注意を払っていただくようお願いいたします。
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